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【気になる名前】

名前が気になります。

私が小学校6年の時、地下鉄千代田線の「明治神宮前」という駅が開業しました。
当時の私にとって、そこは何をどうしたって「原宿」としか言いようのない場所だったため、何とも不思議だったのを覚えています。
今では、駅名を付ける難しさも理解出来ますし、何より都内には上記のような乗り継ぎ駅がいくつも存在することを知っています。
ところが最近、「明治神宮前」が、「明治神宮前<原宿>」と併記されるようになりました。
あ~ぁ、こうやって名前は長く複雑になるのか…と、やや憂鬱になりました。

「三菱東京UFJ銀行」は、数年前の合併時、恐らく両行譲らなかったのでしょう。
…でも、大手銀行の公共性もお考えください。
長さや順番もさることながら、漢字とアルファベットの妙な混在により、日本語の美しさが壊されているのが実に気になります。
こちらは、国鉄民営化の時に生まれた「JR東海」などを、20年以上かけてようやく受け入れる気持ちになったばかり。
街の一等地に必ず存在するメガバンクが、聴覚視覚の両面から庶民を攻撃している感じがします。
そうしたら、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」という看板を見つけてしまいました。

先日、調布市にある「くすのきホール」でのお仕事がありました。
そのホールは「調布市文化会館」の中にあります。
「調布市文化会館」は「たづくり」という別名(愛称?)を持っています。
「たづくり」の中には、「くすのきホール」「むらさきホール」など、いくつかの施設が入っています。
…もうこのあたりで“限界”なのですが、運営しているのが「公益財団法人調布市文化・コミュニティ振興財団」という組織。
電話をすると「はい、調布市文化財団“たづくり”です。」と出ます。
ワタシは「くすのきホール」にヨウがアルのデスが、、、。

名曲には、しばしば愛称が付きます。
「交響曲」とか「ソナタ」と言うより、「運命」とか「熱情」と言った方が何となく嬉しいですし、ネーミングの良さがその曲の人気を後押ししているケースもあるでしょう。
そんな中、「G線上のアリア」は、曲目を紹介する時にとても困ります。

まず、原曲のタイトルはご存知「Orchestersuite, Ouvertüre」。
私にとっては、「明治神宮前<原宿>」みたいなもの。
どちらかに決めて欲しい、、、。

次に、その直訳の「管弦楽組曲」「序曲」。
これはどちらも、固有名詞としては著しくインパクトに欠けます。
「調布市文化会館」にも「たづくり」という別名があって、その中の一施設を「くすのきホール」と呼んでいました。
「管弦楽組曲」の中の極めて美しい1曲を「G線上のアリア」と呼ぶくらい…とは思うのですが、原調のままピアノで演奏することが多いので、どうにも抵抗感が、、、。

いっそ、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」方式で、「管弦楽組曲<序曲>第3番第2曲アリア」と呼べば問題ないだろう…と思いきや、スコアに書いてあるタイトルは「Aria」ではなく「Air」、、、。

う~ん。
かくして、この大好きな曲を演奏する時、何と紹介したら良いものか、悩みは永遠に続くのデス、、、。

2011/05/01 杜哲也