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【第23回/学校の音楽】

日本の学校には、小学1年から音楽という科目があります。
国語算数理科社会と音楽を同列に置くようになったのは、どういう経緯があったのでしょうか。
…実はこれ、とても凄いことだと思っています。
子供たちに、読み書き・そろばんを教えることや、社会のしくみ・自然の法則を教えること、…これらは普通に理解出来ます。
そこに、「歌わせること」を混ぜたのは、昔の日本政府の大きな教育観を見る思いがして少し嬉しい気分です。

ところで、音楽や図工はあるのに、演劇や舞踏は何故ないのでしょうか。
今なら、写真や映画などはどうなのでしょうか。

学校教科として存在することは、裾野の拡大に直結します。
また、音楽家サイドにとっては、雇用の安定面からも実に大きな役割があります。
少なくともこれらの面において、音楽は他の表現分野よりもかなり恵まれていると言えるでしょう。
一方で、音楽家と他の表現者を比較した時、どことなく音楽家たちのひ弱さを感じる時があります。

いつだか行政支援の内訳を見る機会がありましたが、その時の申請者の半数以上が音楽団体だったため、何となく気恥ずかしさを覚えました。
私は、公的資金を受け取って活動することに、どこかズルさを感じてしまうのです。
長年恵まれた状況下にいる人たちがひ弱になっていくのは、決して不思議ではなく、そんな人たちの作る音楽に私はあまり興味が持てません。

もうひとつ、気になることがあります。
現代の子供たちは、教室の外にあまりにも多くの音楽体験の場を持っている…という現実です。
少なからぬ先生たちが、やる気の無い生徒に無理矢理歌わせる馬鹿馬鹿しさを感じていることでしょう。

時代はどんどん変化しています。
もう音楽は国語算数とは同列に置かず、部活動に限定…なんていうのも悪くないと思うのですが、、、。

2012/07/01 杜哲也