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【第38回/瀧廉太郎“花”】

♪春のうららの 隅田川 …♪
日本人で、瀧廉太郎の名曲「花」を知らない人はまずいないでしょう。
先日、この曲について面白い発見があったのでご紹介します。

この曲、実は独立した作品ではなく、「組歌“四季”」という連作歌曲の中の1曲だ…というのです。
全体は次のようになっています。
組歌「四季」
 第1曲 花
 第2曲 納涼
 第3曲 月
 第4曲 雪
言うまでもなく、4つの歌は「春・夏・秋・冬」を表現しています。
この中で、春を表した「花」だけが飛び抜けて有名になってしまい、他の3曲はほとんど歌われる機会がない…というのが現在の状況なのです。

恥ずかしながら、私は今回このことを初めて知りました。
でも、日頃から日本歌曲を歌われている方たちにとっては、多分当たり前の話なのだと思います。
YouTubeで検索すると、すぐに全曲聴くことが出来たからです。
そして、少なくとも音楽的には、「花」以外の3曲が無視されていく理由は何一つありませんでした。

瀧廉太郎は、明治12年(1879年)生まれ。
入ってきたばかりの西洋音楽に日本語を乗せていく作業は、お手本となる素材がほとんどなかったはずです。
これを作曲したのは20歳か21歳で、3年後には他界しています。
本当に素敵な歌を残してくれました。

今の感覚と違うのは、連作4曲の作詞者がすべて異なること。
3曲目の「月」では、瀧廉太郎自身が作詞をしています。
そして今の感覚と同じなのは、連作ゆえ、「通して聴かせる」ことを前提として作られている…ということです。
これは、冷静に考えれば当たり前の話。
現在の状況を本人が知ったら、果たしてどう感じるのでしょうか。
とても興味があります。

どうぞ皆さんも、お時間のある時に是非一度「通して」お聴きになってみてください。

2013/10/01 杜哲也

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