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【第40回/味と表示、音と表示】

阪急阪神ホテルグループのレストランで、メニューに偽装表示があったことが報じられました。
更にその後、長年にわたって同じことをやっていたお店が全国に幾つもあることが明らかになりました。

多分それらのお店では、偽装表示をすると売上げは上がったのだと思います。
つまり、来てくれたお客さんの多くは喜んで帰ったのでしょう。
あ~美味しかった、また行きたいネ…となって、うまく回転していたのだと思います。
へそ曲がりの私は、いっそのこと、発覚したお店の中にミシュランガイド掲載店でもあれば面白かったのに…と考えてしまいました。

だって、そのエビ、美味しかったんでしょ。
エビの身にもなってみてください。
出来れば、芝エビとして生まれたかったかもしれません。
バナメイエビなんて名乗っても、誰も分かってくれないし…。
人知れず(エビ知れず?)、ボクを食べてくれれば分かるよ…と思っていたかもしれません。
「やっと沢山のファンが付いたとこだったのに…。」

でもね、バナメイエビくん。
人間は、面倒で不思議な生き物なのです。
味を買うと共に、表示も買うのです。
ごめんなさい。キミには何の罪もありません。

「味と表示」を「音と表示」に置き換えます。

阪急阪神楽団の演奏会プログラムには、うちのプレイヤーは全員芝エビであって、バナメイエビなんて一人もいないことが書かれています。
来てくれたお客さんの多くは、あ~やっぱり芝エビはウマイね…と満足し、次の演奏会も予約して帰ります。
そして長年に渡り、同楽団の演奏会は常に盛況が続いていました。
ところがある日突然、楽団マネージャーが記者会見し、実はうちのプレイヤーは全員バナメイエビでした…と謝罪します。

音楽や料理における表示は、どこまで必要なのでしょうか。

2013/12/01 杜哲也

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