第178回/俳優座劇場閉館
今月、俳優座劇場が幕を閉じます。
劇場を支えてきたお一人・宮澤一彦さんによるコラムが、先月中旬、朝日新聞に掲載されました。
タイトルは、「劇場閉館が問う文化行政」。
劇場は公共財である…という信念の下、俳優座劇場が果たしてきた役割や苦労が紹介され、閉鎖の決断に至る無念さと文化を支える行政の役割を問い掛ける内容です。
比較するほど不届きではありませんが、小さな音楽スタジオを30年以上経営してきた身としては、正に心に染みるコラムでした。
恐らく今後あの場所では、優秀な企業による経済効率の良い新しい営みが始まるのだと思います。
宮澤さんは、「劇団俳優座が無くなる訳ではないので、経営に苦しむ中小企業の単なる方針転換という見方もあるが、この劇場が潰れることは、日本の文化行政の在り方を問う出来事だ」と訴えています。
俳優座劇場は1954年オープン。
半蔵門にある国立劇場は1966年の開館で、宮澤さんの文章からは、行政より12年も早く始めていることへの強い誇りを感じました。
行政を動かすには、どうしても時間が必要ですが、民間の力の凄い所は向こう見ずなまでのスピード感。
反面、どうしても安定感に欠ける中、この劇場は、70年以上に渡って日本の民間劇場文化を引っ張ってきたことは間違いありません。
来月から俳優座劇場は無くなるものの、ここで作られた文化は生き続けます。
これからは、ここで舞台を体験した多くの人たちが、日本の劇場文化の先頭に立って社会をリードしていくことでしょう。
文化には、そのような逞しさがあるのです。
ありがとう、俳優座劇場!
俳優座劇場、ブラボー!
= 2025/04/12 杜哲也 =
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